治療日記 5 前腕の骨折

2019.10.10 カテゴリー:

今回は転倒後に右腕の骨折をされた方の症例です。

<症例 右橈骨頭不全骨折>
(治療期間2か月 週1回)

60代女性 仕事は保育
既往歴 膝の痛み 左肘骨折
原因 歩行中に転倒して右肘をついた

初検時の訴えは
・右肘が伸ばせない
・患部の腫れ、皮下出血、熱感
・右肩から背中にかけての張り

今回は他の整形外科で整復してから来院され、後療法からのスタートでした。
レントゲンではわずかにヒビが入っている程度で、大きな骨折線や*転位は見られませんでした。整形外科では3週間の固定を指示されていました。
*転位・・・骨が本来の正しい位置から逸脱している状態の事

ー治療の方向性はー
・骨折部への治療は癒合が完了してから
・固定解除までは姿勢を正していく治療を優先
・固定期間中は患部以外の関節運動を進めていく

骨折の治療は基本的には整復位で固定して徐々に*良肢位に近づけていく事です。
その間は全身の状態を整える事で、自然治癒力を高めていきます。
固定が解除になったら、患部のトリガーポイントや近くの関節にアプローチします。
目安は固定期間の2倍の期間が必要になることが多いです。
*良肢位・・関節が固まってしまった場合でも日常生活に支障が少ない関節の位置

■1-3週目
患部に皮下出血斑、腫脹、限局性の圧痛を認める
屈曲100°付近で肘後方に疼痛
ギプス固定による肩関節不動の為、ひどい肩こり
不眠が継続

姿勢を整えるため、顔や首の治療を中心に行いました。
痛めた側の肩や顔が下がっていることが多いです。

■4-6週目
固定は解除、患部の皮下出血や腫脹はほとんどなくなり
限局性の圧痛も軽減
屈曲100°~110°くらいまでは疼痛無し
伸展-20°

4週目から患部に弱い刺激で治療を開始していきました。
固定期間中に患部以外の関節をよく動かしていたおかげで、拘縮は少なく
筋力の低下もわずかでした。

上肢の固定は特に手がむくみやすいので、なるべく高い位置で指の運動をしておくことで、スムーズな運動が可能になります。

■7-8週目
腫脹、圧痛はほとんどなし
最終屈曲・伸展時にやや痛みが出る程度で日常生活、仕事で大きな問題はない状態になりました。
天候や気温の変化で痛みを訴える方が多いですが、そういった事もなかったので本人に確認をとり治療を終了としました。

今回の骨折は大きな転位がなく、固定期間中から他の関節部分を動かしていたおかげで、早く完治してくれました。
骨折の場合は整復位と固定状態がしっかりしていれば、しっかりと癒合してくれます。
ただ、全身の状態(糖尿病や骨粗鬆症、喫煙習慣など)によってはかなり個人差が出てくるので、癒合が長引いている場合は内科の治療や生活習慣を見直してみる事も
必要だと思います。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

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