治療日記6 内股歩行

2019.11.05 カテゴリー:

今回は内股歩行が気になるという方の症例です

<症例 両内股歩行 特に左脚>
(治療期間2か月 1回/週)

中学1年生 男の子
既往歴 小3の時から歩容が悪くなった 交通事故 便秘症
原因 不明

初検時の訴えは
・内股歩行を改善したい
・猫背を治したい

歩く姿勢を良くしたいという理由で来院されました。
本人に痛みはなく、どちらかというと体質などの根本治療になるので変化が出てくるまで時間がかかることは事前に伝えておきました。

姿勢や歩容を見ていく際は
・毎回鏡で自分の姿を確認してもらう
・レントゲンを撮ってもらう
・全身運動が必須

姿勢は脳がコントロールしてくれています。
常に意識できるものではないので、鏡を見ることで姿勢への注意力を養っていく事が必要です。
不良姿勢が原因で歩行バランスが乱れているのなら、必ずレントゲンを撮ってもらい首や腰の状態を確認することが大切です。
足先だけの問題と考えずに、なぜそうなってしまったのかを追求するためにも常に全身を診ていきます。

首は前へのカーブが少なく、重心から離れているように見えます。
胸椎に関しては整形外科で側弯が見られるとの事でした。
腰はすこしカーブがきついように見えます。

■初回は鏡での姿勢チェックと歩行状態を確認していきました。
本人だけでなく家族の方にも見ていただくことで、より意識を持つことが出来ます。
歩行に関しては3~4mを3往復程歩いてもらい、つま先の向きや腕の振り方、歩幅などを確認していきます。
いつも履いている靴の減り方を見ておくことも大切です。
今回の患者さんは左の股関節の内反が強く、靴も左踵の内側がよく減っていました。
現状をしっかりおさえておくことが治療のスタートです。

■1~3週目
治療は全身の状態を整えるために、顔から治療をスタートします。
関節の動きやバランス、筋力などに変化がないか治療と検査を交互に行っていきました。初回から2週目までは夜に目が覚めたり、定期的な排便がない状態でしたが、3週目からは夜に目が覚めることが減ってきました。
しかし、塾通いや室内で過ごす時間が長いことから運動する時間が確保できていませんでした。
そこでホームエクササイズとして股関節のストレッチや体幹のトレーニングを指示しておきました。

・股割ストレッチ
・ハムストリングストレッチ
・股関節外転運動
・プランク(腹筋運動)    各10回 2-3セット

歩行は全身運動になるのでそのために必要な体幹と股関節の連動性を高めることを優先していきました。
最初のうちは簡単な運動をやってもらうことで運動に対する意識を高めてもらうことが重要です。いきなり難しい運動から始めると体を痛めてしまったり、できないことで嫌になってしまうことがあります。

大切な事は自分だけでも続けられるかどうかです。
習慣化させること。
生活のルーティンに組み込ませることです。

2-3回やっただけで効果が出てくるものではなく、最低でも3か月は続けてみないと分かりません。

体質や身体の動きを変えていくという事はそれだけ大きな労力と時間を必要とします。その間はしっかり自分と向き合わないといけません。
そこが難しいのです。

■3~6週目
股関節の動かし方に大きな変化はなく、不良姿勢も続いていました。
関節の動きや筋力の状態は初回時よりも良くなっていましたが、動きの連動性という点からみると変化は見られませんでした。
まだ体に変化が出てきてないだけだと思い、経過観察としました。
その間も股関節と体幹のトレーニングは続けてもらい、動作確認も継続していきました。

■7週目
治療後の姿勢は良くなっているのに、1週間後にはもとの姿勢にもどっていることが多くなってきました。
大体2か月くらい経過すると姿勢が変化してくるのですが、今回の患者さんには改善が見られませんでした。
不思議に思いご両親に自宅での過ごし方を伺ったところ、普段の生活においても猫背姿勢であったり、脚を組んだまま本を読んだりしていたそうです。

変化が出てこなかった原因として考えられるのは・・
・姿勢を悪くする癖が抜けていなかった。
・正しいストレッチや運動が定着していなかった。
・運動や姿勢のチェックが十分でなかった。

のようなことが考えられます。

あくまで治していくのは本人自身の体です。
治療する側としては正しい刺激を正しい順番で与えたり、体の構造を維持するためのエクササイズを指導することは出来ますが、それを大切な事だと受け取り継続してトレーニングしていくのは患者さん自身だと考えます。

結果としてこの患者さんは2か月間で優位な変化が出てこなかったので、途中で中止をされました。
本人の意思というよりもご家族の希望でした。

個人的にはもっとやる気を持たせてあげて継続してほしかったです。
そのためには

具体的な目標設定を作る(3か月後には30mを真っ直ぐ歩けるようにする )
変化を評価する(前回より~cm関節が曲がるようになってきている )
一緒に取り組む(患者さんだけでなく自分も同じことをやって見せる)

など、モチベーションを高めるための仕組みを取り入れ、励ましていく事が必要だと考えます。

悪い癖を治し、良い習慣を作ることがいかにたいへんかという事を学ばせてもらった症例でした。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

 

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